10.承認するということの意義

ここでは重要なコントロールのうちの承認についてお話しておきたいと思います。RCM(リスクコントロールマトリックス)のコントロールとして、誰々がこれを承認しているという記載があったときに、承認があるから問題ない、整備状況は良好であると簡単に考えていいのでしょうか?  承認権限者が承認するということは、企業がその取引を正当なものとして受け入れる、企業の取引として認めるということです。企業が正当な取引であると認めるためには、承認権限者が権限と責任(本当にその人が承認していいのか)、適切な権限と責任を有しているのかということがまず問われます。単に誰が承認しているというのではなくて、その承認者が適切かどうか、そこまで考えなくてはなりません。  承認権限者として、権限と責任を有していないものが設定されているのであれば、それでは整備状況が良いとは言えない可能性が残ります。  また権限者が承認をするためには、その判断に必要な書類が権限者に渡されていなければなりません。そのような、判断に必要な書類の提示がなければ、それは単なる空チェックではないかということになりかねませんので、その場合、運用状況に問題があるのではないかということを指摘される可能性もあります。  次に問題になるのが、システムに組み込まれた承認です。システムのワークフロー上で、承認という設定がされている場合、その承認者は職務権限規程の承認者と同一の者になっているかどうかが問題となります。システム上の承認者と本当のルールの承認者が違うというのであれば、それは問題です。承認者以外の者やその課の人全員が承認できるような設定になっていれば、それも問題だということになります。  承認に関して最後に重要なポイントを申し上げたいと思います。実は日本の会社は内部統制で入力のチェックとか、正確に処理しようというチェックは非常によくやっていると思います。仕入取引とか売上取引とか相手先もいることですので、これを間違えたらクレームが来るという問題もあろうかと思いますが、背景はともかく、正確に処理しようというコントロールというのは非常によくやられていると思います。ただ、その処理を正しい期間にやるというコントロールを設計されている会社は、ないとは言わないですけれども私が現場で見てきて、それは担当者任せになっている場合がほとんどです。あえてそういったコントロールは設けないという会社もあるかもしれません。  しかし、財務報告目的の内部統制を考えた場合、適切な期間に処理されているかどうか、それを組織としてどのようにチェックしているかという観点が、会社にとっては改めて検討すべき、重要なポイントになってきます。  例えば承認に関しましても、不良資産の廃却、長期滞留資産の廃却、固定資産を休止していて使える見込みがないので廃却しますと承認をもらったとします。承認はもらいましたけれども会計処理されていない。そのような場合、金額が多額である場合であれば、これが処理されていないと財務報告に重要な影響を与えることも考えられる。そのとき、会社はどのようなコントロールをしていますか。すべての承認が会計処理されたということをコントロールする術を会社が持っていますか。  このような点が、一般的に日本の会社の既存のコントロールでは弱い部分ではないかと思います。そういったコントロールがない、または弱い会社につきましては、今のうちに、どのようなコントロールを整備すればよいか検討しておいたほうがよろしいかと思います。

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