1 会社の身の丈に合った「人件費」はいくらか

右肩上がりの経営環境で企業が成長し続けていた時代には、賃金は世間相場として公表されるいくつかの指標の中から会社の都合のいいものを選び、一人ひとりの個別賃金を見直しました。
その積み上げによって総人件費の予算を立てていた会社は少なくありません。
今日ではこの方法で予算を立て、実際に支払っていくことは、企業の存続発展の観点から困難になってきています。
それぞれの企業が体力としてもっている「支払可能人件費」の額を超えて賃金を支払うことは、企業の存続を脅かします。
そこでまず、自社の支払可能人件費を計算してみることからはじめます(下の参照1)
人件費に影響するものは、公式の右辺の3つの要素です。売上高が下がった場合に今の人費を維持するためには、限界利益率を上げるか労働分配率を上げるか、またはその両方を上げる必要があります。
価格競争が激しくなると限界利益率も下がりますから、人件費を現状維持する頼みの綱は労働分配率を許容限度まで上げることになります。
たとえば、売上高が10%下がった場合に、人件費を10%下げることで足りるかというと、それではうまくいきません。社員のモチベーシヨンは下がりますし、企業側から見ると売上高の減少により、必ず限界利益の額が少なくなります。それにより人件費目%ダウンの対策では、不十分な場合が多いからです。
公式右辺の労働分配率に(許容)とつけましたが、借入金の多い会社と無借金の会社では、その許容範囲が異なります。
これらの意味を理解するために、限界利益(率)と労働分配率について、改めて説明していきます。

参照1

支払い可能人件費=売上高×限界利益率×(許容)労働分配率

参照2

限界利益=売上高―変動費

参照3

限界利益率=限界利益÷売上高

参照4

限界利益=売上高×限界利益率

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