労働分配率は、人件費(D)に限界利益(C)を除して計算されます。
限界利益の中から、どのくらい人件費に支払われたかということを示しています。黒字中小企業の平均値は図I’Iの労働分配率の全産業平均で53.1%となっています。
昨今ではこの労働分配率が80%を超える会社も少なくありませんが、そのような会社はおおむね赤字会社です。「労働分配率が高いけ赤字会社」というわけではありませんが、限界利益の中で人件費の占める割合が高いということは、固定的支出にまわせるお金が少なくなるということを意味します。
さて、下の参照1から、限界利益の額が十分にあれば、高い労働分配率であっても利益は創出できることがわかります。
C社の労働分配率は初%と高くなっていますが、限界利益の額が大きく、人件費とその他の固定費をまかなうことができるため、2000万円の営業利益を出している例です。事業形態によって、高い労働分配率でも利益を出すことができます。しかし、弁護士高井伸夫先生の言われる「含み損社員」が多い場合も労働分配率は、異常に高くなるので注意が必要です。
このことから「労働分配率は何%がいいのか」は一概には言えません。企業によっては支払可能人件費が著しく低いこともあります。そのとき支払可能人件費のとおりに人件費を削減することは現実的ではありません。
「人」という経営資源を重視し、企業の存続と発展のために算出された支払可能人件費の額を超えて(許容労働分配率を超えて)支払うことを決めるのが、「戦略的適正人件費」であると考えています。戦略的適正人件費を考える場合に(支払い可能人件費=売上高×現価利益率×(許容)労働分配率の計算式によって)、支払可能人件費を認識しておくことが大切です。
「適正賃金」に造詣が深い飯野峻尾先生は、近著「『人件費支払指数』から割り出す適正賃金と最適人員の決め方」(株式会社アーバンプロデュース刊)で、人件費吸収力、人的資源貢献力等の考え方を入れた優れた算式を発表されました。人件費の適正さを考えるうえで、とても参考になります。
参照1 労働分配率を比較する (単位:万円)
A社 | B社 | C社 | ||||
売上高 | 100,000 | 100000 | 200,000 | |||
変動費 | 70,000 | 70,000 | 140,000 | |||
限界利益 | 30,000 | 30% | 30000 | 30% | 60000 | 30% |
人件費 | 18,000 | 60% | 24,000 | 80% | 48,000 | 80% |
その他国定費 | 10,000 | 10000 | 10,000 | |||
固定費計 | 28,000 | 34,000 | 58,000 | |||
営業損益 | 2,000 | ▲4,000 | 2,000 |
•A社、自社、C社ともに限界利益率は30%、その他固定費はー億円。
•A社、日社は売上高は同じー0億円、A社の労働分配率60%、自社は80%。
•8社、C社は労働分配率は同じ80%、B社の売上高はー0億円、C社は20億円。