2 経営者はなぜ職場をつくるのか?

では、職場で雇われて働く人たちは、何を求めて集まってきたのでしょうか。
当然のことながら、賃金を求めています。学卒者の多くは、この時期に親の経済範囲から自立します。そのことによって親の教育責任は、一応の区切りをつけることになります。初めての賃金は自立の出発という意味を持っています。自ら基本的な欲求を充足していかなければなりません。
物質的に豊かになった社会では、飢餓の恐れや住居に困ることはありませんが、今では安定した職場を求めるようになりました。
人々が職場に求めるものは、賃金だけではありません。
職を求める人は、無意識にどこかに帰属して連帯したいという欲求を持っています。人類が群れをなす欲求を持っていたのと同様に、人は独りで生きていけないことを本能的に感じているのです。
先に述べた「マズローの欲求段階説」に当てはめれば、社会的欲求に相当します。人が連帯することによって、役割の分業による協業が可能になります。分業があるゆえに自分の得意な能力の可能性を試してみたい、能力を磨き発揮して社会に貢献したいという動機をもち職場に集まってくるのです。
このように人は独りで生きていくことができない、他人との係わりのなかで、自分の存在を認めてもらいたいという欲求(社会的欲求)を充たすために、職場を求めます。
職場に属した人は、その能力でより役に立ち目立つ存在になろうとする(自己顕示欲)、チャレンジ意欲に目覚める人がいます。高い目標を達成して賞賛を浴び、存在感を高めます。
そして、自分はこの職業を通して、どんなところで役に立っているのかという内面からの問いをもつようになると、自分の職業に本当の意味と価値を発見して、使命感を感じるようになるのです。

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