2 会社への誇りと自信を育てる「情意評価」

情意評価とは何か?
情意とは愛情と意志(意欲)の合成語であるというのが、私の解釈です。「人生は愛と意志のドラマである」を職場で実践し、その成長度合いを見ていこうとする個人の日常生活に密着したものです。
愛情とは人と人とを結ぶもの、すなわち職場における良好な人間関係を目指すもの、意志とは志を実現したいという意欲です。よりよく生きたいという、根源的な欲望に職業を通じて、自分も豊かになり、人のお役にも立ちたいという心根をもっ欲求です。意志とは、自己実現に向けて働く作用をもっています。
自分が選んで決断した職業で会社から認められ、能力を高めたい。また、期待に添い、存在感ある自己を形成したいと決断したからです。
自分の意志で選んで決断した会社ですから、その会社を愛し、誇りに思えるような職場を形成していこうとするのが、情意評価の目的です。

情意評価は「企業の存続発展」に最低限必要な評価視点
情意評価は、人が生きていくうえで必要な「愛の実践と意志の実現」を、職場内で訓練していくことを意味します。これをドラツガーの「企業経営の目的は、存続し発展すること」に関連づけて考えてみましょう。
まず、会社が存続するためには、最低2つのことが必要です。
・規律性――会社が定めたルールを遵守すること。上司の指示を守るということ。
・責任性――自分に与えられた任務を中途半端でなく、最後までやり抜く姿勢。高いレベルでは、自分の役割や任務を自覚し自分に期待されている任務を全力で果たす姿勢。
・次に会社が発展していくためには、最低2つのことが必要です。
・協調性――社員が互いに援助し合うこと。チームプレイに対する取り組み姿勢。
・積極性――現状に満足せず、常に改善改良を前向きに勇気をもって取り組む姿勢。
いずれも会社の存続と発展を数値でとらえるものでなく、会社内での生き方、態度、姿勢に関連するものです。
自分の人生の大半の時間を過ごす会社を愛することのできる人は幸せです。嫌な会社で過ごす時間は苦痛なものです。
自分の属する会社に自信と誇りをもてることは、自分の人生を明るく、常にプラス思考の発想で生きることができ、会社を自己実現の場として活用することができます。
情意を代表する「規律性」「責任性」「協調性」そして「積極性」を抽象的な言葉の概念でとらえるのでなく、評価が可能な行動レベルに表現する必要があります。私はこれらをAIシートと名づけ、評価基準書としています。
参考例としてある医院のAIシート(下1~2)を示しておきますが、模倣は避けるべきであり、自社にとってどのように作成したら適合するかを検討して、手づくりで独自のものにしていく努力が必要です。AIシートのつくり方ですが、まず4つの概念の説明をし、内容の理解ができたら、次にあなたの企業で規律性の観点から、緊急に改善したいことがあれば、それを書き出していきます。たとえば、建設業であれば、現場で安全帽をかぶらない人がいたら、徹底していかなければなりませんから、それを項目に入れていくようにします。
「規律性」で5項目書き出せたら、次は「責任性」も同様に作業をすすめ、4要素5項目
で合計却項目をリストします。内容が幼稚であるとか、見映えが悪いという評価をしてはいけません。その会社にとって緊急を要することを書き出しているためです。
また、ある項目が「規律性」なのか、「責任性」なのか、または「協調性」なのか迷うことがありますが、適当などこかに入れることです。形式にこだわるのでなく、内容で充実していくことが肝心。手作りした緊急課題の改善リストは親しみがありますから、実践しやすいものになります。
会社全体で統一的なものをつくってもいいですし、各部門独自のものを作成しても結構です。その職場をよりよくするものをリストアップします。社内で5S(整理・整頓・清掃・清潔・習慣)運動を実践している場合は、その中からリストアップすることもできます。

(AIシー卜)は企業文化の刷新に効果がある
ある法人では、5Sを組み入れたAIシートの中に「日報はその日のうちに提案する」と決め、徹底して実施した結果、模範的な成長を続けています。この型を軌道に乗せるまでに十数年の年月を経ていますが、問題を先送りしないこと、報告・連絡をすぐにすることなどの企業文化ができあがり、職場にあふれる情報と感情の流れがヨコ型に共振したことが成長の秘訣となっています。

AIシートは、企業文化の刷新にとても効果を発揮します。組織が有機的関連性の中で
相乗効果を発揮するためにも、その土壌を良質にすることが必要です。この当たり前のことを当たり前にする小さな行動が、なぜ組織の中で効果を発揮するのかを学問的に示す公式があります。
B=f(p・e)<Bは行動、Pはパーソナリティー、eは環境>
行動と人格と環境に関する、クルト・レヴインの行動科学の公式です。行動は人格と環境の関数であることを意味しています。B・P・eは、どれを少し変化させても、他も変化することを意味しています。P(パーソナリティー)を替えることは、そう簡単ではありません。e(環境)を変えることも、容易ではありません。
家庭を変えること、会社を変わることは極めて困難なことです。
最後に残るB(行動)を変えることが、3つの要素の中でもっとも簡単であるのがわかります。「型から入って心に至る」ことに取り組めばいいのです。観察可能な行動を変えることで、P-eが少しでも変化するのは、自己変革を志す人に希望と勇気を与えてくれます。

参照1 AIシート(規律性)――――D医院の場合

評点 規律性 自己 上司 決定
Ⅰ患者さんまたは外来者に正しく状況判断をし、適切な対応をしているか
5 正しい状況判断をし、適切な対応は当院の模範になっている。
3 ほぽ正しい状況判断をし、適切な対応をしている。良好である。
1 どちらかというと、できている。
-1 できたり、できなかったり。
-3 どちらかというと、努力が必要である。
II 5分前ルールを守っているか
5 いつも守っていて、他の模範となっている。
3 いつも守っている。
1 どちらかというと、守っている。
-1 実行したり、しなひったり。
-3 どちらかというと、できていない。
Ⅲ 他のメンバに迷惑をかけるととなく出勤しているか
5 メンバーに迷惑をかけることなく模範的である。
3 メンバーに迷惑をかけるととがない。
1 休むときは決められた手続きを事前にいつもとっている。
-1 勤務体制に支障をきたしている。
-3 勤務体制に支障をきたし、周囲に悪影響を与えている。
Ⅳ 報告・連絡は的確に早くしているか
5 つねにタイムリーな報告、連絡がなされ、ほかの模範になっている。
3 優先田位をきっちりつけて、ほとんど催促されることなく報告している。
1 良好にできている。催促されることもほとんどない。
-1 めったに催促されることはないが、要領がいま一つで改善を要する。
-3 しばしば催促されている。
4項目得点
Ⅴ I~Ⅳをきちんと指導しているか  
5 タイムリーに誉める、叱る、指導ができている。(勇気ある指導力)
3 だいたいできている。(もう一息のところ)
1 したりしなかったり。(ただし、意識は持っている)
-1 どちらかというとやらない。
-3 まったくやらない。
5項目得点

参照2 AIシート(責任性)――――D医院の場合

評点 規律性 自己 上司 決定
Ⅰ 指示されたこと、または与えられたことを愚後までやり終えたか
5 つねに実行され且つ、内容的にも優れている。期待以上のできぱえである。
3 自分の役割を認識し、指示されたことは忘れす実行する。
1 与えられたととは、普通にできている。
-1 時として不安を感じる。
-3 実行されていないととがある。
II 自分の失敗を他人に転嫁していないか
5 自分の失敗をカバするととができる。再発防止策を出すととができる。
3 言いわけをしないでやりなおす。
1 自分の失敗を素直に認める。
-1 言いわけをする。
-3 責任を感じられない。
Ⅲ 自己管理ができているか
5 自己生活を健康的に整え、日守をイキイキと仕事に励んでいる。
3 体調が不調なときは、早期受診するなど自己管理ができている。
1 ほぽ健康で安定して仕事ができる。
-1 たまに体調を崩し、仕事に支障をきたすことがある。
-3 体調を崩し、急に休むととが多い。
Ⅳ 医療人として守秘義務を守っているか
5 プライバシーの保持に、細心の注意と配車があり、患者とその家族の信頼をえている。
3 患者とその家族のプライバシーの保持に注意し、医積人として任務を運行している。
1 守秘義務を守り、医療人として任務を遂行している。
-1 時としてプライバシーの保持に対する配慮が、できていない場合がある。
-3 どちらかというと、プライバシー保持に対する配慮ができていない。
4項目得点
 
Ⅴ I~Ⅳをきちんと指導しているか
5 タイムリーに誉める、叱る、指導ができている。(勇気ある指導力)
3 だいたいできている。(もう一息のところ)
1 したりしなかったり。(ただし、意識は持っている)
-1 どちらかというとやらない。
-3 まったくやらない。
5項目得点

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