人は存在するだけで、周りに影響を与える
人は存在するだけで、周りに影響を与えるほどの大きな力をもっています(下1参照)。無言で座っているだけでエネルギーをもち、周りに刺激を与えています。会話をすれば、たちまち「刺激日反応の作用(私の刺激に反応する他者の反応が、即、私への刺激となって循環する)」が働きます。「刺激H反応の作用」の中で、私の興味・関心・好奇心のあるものが意味を見いだし、情報が生成されます。
興味・関心・好奇心をもっ人間は、自分が生きていくために必要な情報を求めるという積極的な目的をもった活動をし、情報収集をします。それも積極的な情報収集意欲が情報交換をはじめます。
収集した情報は、分析され整理されます。整理とは不要なものを捨てることです。必要なものは蓄積されます。蓄積を行う際も、興味・関心・好奇心が働き、合理的に優先順位(プライオリティ)がつけられ、整頓されます。
よく使うものは記憶され、知識となります。記憶されないものは体験となり、知識と共に個人の保有能力になります。このプロセスが学習意欲によって、潜在能力から保有能力が抽出されます。
興味・関心・好奇心をもっ人聞が、自分のしたい目的を発見したときに意欲が湧いてきます。意欲が保有能力に働きかけ、発揮能力になるというのが、私の考えです。情報量が多いほど能力が高まることになります。
情報量とその質の掛け算が組織能力となる
職場には公式(フォーマル)な情報交換と非公式(インフォーマル)な情報交換がありますが、いずれの場合も、個人ベースで整理された情報が発信されます。
たとえば、私が整理した情報を発信したとき、受信者が興味・関心・好奇心をもち、共感するものはその人の知識情報になります。その人が「どこかで聴いたことがあるなあ」と感じるものは、過去の体験に働きかけられます。また、共感するものは知識・情報となります。
私の発した情報と、その人のもつ知識情報が互いに刺激しあい、二人がまったく意図していなかった新しい知識情報が生まれることもあります。これを創発的情報と呼びます。
職場における公式的なコミュニケーションの中心は、「報告・連絡・相談」の形をとり、仕事のやり方を教えられたり、仕事の目的・目標が与えられたりします。
目的が与えられた場における情報交換では、その職場でどのような情報が大切にされ、また重要でないものはどのようなものがあるかという、情報の整理と価値基準を人々は学びます。
さらに整頓される段階で優先順位がつけられ、これらの段階で同じ考え方、同じような感じ方をする人がわかり、共通理解度を深め、グループが形成されることもあります。これが情報の共有による仲間意識の形成です。
より親しくなると、その場には共感のエネルギーが流れ出し、そこでは共鳴しやすい環境で相互に助け合い、目的の実現に向けて協働しあうという雰囲気が醸成されるのです。共振しやすい環境になると高いレベルでの心的エネルギーが生じ、場の発揮能力を大きくします。
このような組織における情報の流れと交換による影響を情報的相互作用と言い、その中心には、共通理解と情報共有化の二つがあるのです。
分業による協業(協働)が組織のもつ本来の機能ですから、強い組織は、協業を生産的に行えます。協業を強くするには、情報的相互作用を強化する必要があるわけです。情報的相互作用は、職場に流れている感情の流れに大きく影響を与え、心理的な相互作用を起こします。この作用がプラスに働けば積極的な心的エネルギーが高まり、仕事の生産性を向上させることになります。
組織能力も個人と同様、情報量とその質の掛け算で決まるため、組織内に流れる情報量を増やす必要があり、個人が情報発信しやすい環境、情報の共有化がスムーズにいくインフラの整備をして、情報の束を太くしていく必要がある。それと同時に、質をよくするために、トップによる高潔な理念と、チャレンジャブルな目的をもっ戦略を公開することが望まれます。
理念に統合された戦略を社員に浸透し、目的情報の共有化と達成に向けての積極的な情報交換によって、創発の作用が働き、新しい能力が生まれます。
能力を蓄えるために各自が自発的に情報交換し、大量の情報が自在に流れる企業文化(風土)をつくることで、戦略を実現していく経営資源を得ることができるのです。