7 一時的な「賃金ダウン」で社員の雇用を断固守る

ここまでA社の月例賃金6万8000円(総支給額の5%相当)をダウンすることを前提に説明してきました。しかし、この金額の根拠はどこにあるのでしょうか。なぜ、5%ダウンをしなければならないのか、この根拠を明らかにする説明責任(アカウンタピリテイ)が経営者にはあります。
あなたの会社で働く社員に理解してもらうためにも、万一、賃金ダウンで係争になった場合でも、この根拠が企業の存続の危ぶまれる経済環境の中では、選択せざるを得ないことであることを説明しなければなりません。
私は説明可能な人件費が、戦略的適正人件費であると考え、本書で筋道を明らかにしてきました。経営者の直感が5%であっても、検証していけば納得の5%になり、検証過程で賃金体系の問題点が明らかになっていきます。
企業の倒産は、働くすべての人びとに生命を支える食べものだけでなく、心の食べものと言われるストロークも奪ってしまいます。経営者にとっての企業倒産は、自己破産を招き、個人の財産に至るまで、すべてのものが奪われます。
誰にとっても企業の倒産は、避けなければなりません。そのために企業は経営戦略を策定し、今を乗り越え未来を創る人事戦略が必要です。人事戦略とは「わたしの幸せ、あなたの幸せに向けての、組織活動の基本設計図をもった経営資源の配分と実行であり、将来のあるべき姿とそこに至る変革のシナリオ」です。
企業がもっ経営資源(人・モノ・金・情報・企業文化)を超えた戦略は、失敗します。経営資源の中核は人です。人が企業文化をつくり情報をもたらします。閣の向こうにある光が見えてきたときに幅広い戦略が行えるように、変革のシナリオを描き、着実にそのときに備えるのが「今」です。
そのために、人材の能力アップが急務です。人を育てるには、評価システムが必要です。
「評価なくして人は育たず」ということを全員が納得する企業文化が必要です。共鳴・共感しあって、常にハイパフォーマーな職場が望まれます。そのための情報共有化による組織能力の形成と向上です。それを実現できるのが、優れた評価システムです。評価の抵抗感を取り除き、積極的に評価を求める人々を増やしていくことが、今できることです。

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