1 賃金ダウンに人間力学を取り入れる

賃金ダウンするにもアップするにも、いくらにするのか根拠になる数字が必要です。ただやみくもな賃金ダウンは、不安と不満しか与えません。根拠になるものは経営計画、利益計画から導き出される戦略的人件費です。
経営計画の中には、人員配置計画があります。新しく採用する人、退職する人の賃金も加算減算して計算された総人件費が算出されます。一人当たりの人件費などを勘案して、戦略的人件費が決断されます。
ここで戦略的という意味は、一人当たりの人件費が著しく下がる場合、その下げが社員にとって忍従できるものであるかどうかを考え、下げを緩和する方法や二時的にでもとりいれ、労働力の再生産を考慮するということを意味します。
この戦略的決断をするとき、経営者の感性金三作用がフルに働きます。すなわち、戦略を実現するための合目的作用、働く人の意欲とのバランス作用、および全体を見渡しての統合作用を働かせて、組織の平衡を保とうとする底力が働きます。

最終的に、月額で部門ごとに賃金ダウンしなければならない金額を算出します。このとき、経営者の苦悩は絶頂に達します。昨年と比較して、誰にどのくらい影響するのか胸の痛い思いをします。
「支払いたい金額(理念)と「支払える金額」(現実)の葛藤は、経営者でなければわからない苦悶です。
この十年来、どれほど悩まされ続けたのかわかりません。しかし、今回は今までの状況とは異なる厳しさがあります。その厳しさと心中おだやかではない賃金ダウンの実情を社員に納得してもらうには、心で語らなければなりません。
情熱が必要です。使命感からわきあがる情熱に着火して、近い将来の夢を描いて、現状の苦境を分かち合うことが必要です。
このシミュレーションには、個別対応できるソフトを作成しておき、あれこれ悩むトップの的確な判断をサポートすることが必要です。

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