3 職能等級は社員のレベルに合わせて決める

自社の現実に合った「標準職能給5段階表」のつくり方
職能等級資格制度では、職能要件書(職種ごとの各等級が要求している能力を書き出したもの)に基づいた評価によって、等級と号俸を決めていきます。手間とコストがかかりすぎるというデメリットと、手間をかけたわりに有効性の実感がないのでおすすめをしていません。それに代わって、自社に在籍している社員のレベルで現実的に決める方法、および今後の評価方法について説明していきます。
まず、自社の現実に合わせた「標準職能給5段階表」をつくります。初任給と30代前半、40代前半の柱になる人の実際の月例賃金を参考にし、それに経営者の理念を反映させた金額を決定すれば、容易に「標準職能給5段階表」(以下、テーブルと言います)は作成できます。現在の支給金額を職能給と役割貢献給の二つに分解しますが、手順としては先に役割貢献給から決定していきます。支給総額から標準的な役割貢献給(B評価)を差し引いたものが、職能給となります。その職能給を、すでに作成してあるテーブル上の金額から探し個人名をプロットしていきます。
これが現状の第1次検証です。個人の位置がプロットされますから、相対比較ができます。この作業は100人未満の会社は、1枚のテーブルに記載します。部門は色分けすることで識別が可能になります。100名以上の場合は、マネジメント群を別のテーブルでプロットします。これで部門間の比較、マネジメント群の相対比較が浮き彫りになり、議論百出になることもありますが、感性の合目的作用、調和作用および統一作用が働いて、何%以上の合意形成ができると経験的に考えています。

「能力評価基準書」を使って全員を個別に評価する
次にすでに作成してある能力評価基準書(第5章参照)を用いて、全員に評価を実施します。まずは自己評価を行いますが、その際には、全員を集めて評価の目的や育成の趣旨について数時間の研修をしたあと、間髪をいれずにその場で自己評価を実施します。持ち帰って記入するという方法はとらないことです。その直後に、上司評価も実施して集計分析に入ります。
能力評価基準書を叩枚活用する場合、満点を1000点とします。8枚利用する場合は、プライオリティの高い2枚、たとえば、「コミュニケーション能力」「業務遂行能力」を200点として全体をー000点にして集計をします。

「標準職能給5段階表」と「評価点」を関連づける
前述の作業で、個別賃金と評価点数がわかります。過去の調査の甘辛にまつわる矛盾がでてきますが、それは一旦捨象しておいて、テーブルでー級にプロットされている人が評価で何点とっているか、バラツキを見たうえで平均をとります。
各等級で同じ作業を繰り返すことで、各等級の平均点数とバラツキがわかります。平均点とバラツキの上位数を参考にして、等級と評価点数の関連づけを行います。参考として一つの例を示します(下1参照)
この作業で「標準職能給5段階表」(テーブル)と能力評価基準書の現実妥当性が検証されます。この検証と修正のプロセスは、評価水準を共通理解(合意形成)する上でとても大切です。また、部門間の甘辛もここで時間をかけて議論しておく必要があります。
昇給を行う際には、再度評価基準書によって評価を実施します。前回の評価点からの成長を考慮して、習熟評価の判定(SABCD)をします。習熟昇給は同じ等級で上がっていくことですが、習熟評価の判定から何号上がるのか基準を決めます(下1・2参照)。
例をあげると、現在2等級9号の人がB判定をとった場合は、3号上がることになります。しかし、標準職能給5段階表(下3参照)をみると、2等級の上限は日号です。このとき、能力評価基準書の合計点が、3等級に昇格するための必要評価点である451点(下1参照)を超えている場合は、3等級1号に昇格昇給します。451点未満の場合は、2等級11号で頭打ちになります。

「情意評価」を反映した昇格基準つくりが望まれる
能力評価基準書のみで昇格基準を決めることはできますが、昇格には情意評価も考慮すべきです。能力のみならず、人間関係と意欲は発揮能力の基盤となるからです。情意評価は400点満点とします(各社で決める)。情意評価にはムラがあってはいけませんので、在級平均点を昇格要件の一つに加えることが望ましいのです(下3参照)
能力評価で3等級を卒業して4等級の資格を得た人が、3級在職中の情意評価の平均点数が300点未満であった場合は、情意評価が300点になるまで、昇格を延期することも必要になるでしょう。

参照1 等級基準評価点表

等級 必要評価点 平均点
1級 284
2 301~ 412
3 451~ 574
4 601~ 643
5 651~ 674
6 701~ 732
7級 751~ 780
8 801~ 827
9 851~ 872

ある実在する会社のサンプルである。自社で作成した評価基準書によって、各等級の点数は異なる。等級と点数の関係は、各社で工夫する必要がある。

参照2 習熟昇給換算表

習熟夢軍縮機算表
S…6号以上
A ···5
B···3
C…2号
D…1

参照3 情意評価による昇格基準点

等級 寵級事均点 平均点
1級 224
2 250 288
3 300 348
4級~ 350 372

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