1 戦略志向のできる人材が育てば、企業は変わる!

この本での戦略とは、「企業活動の長期的な基本設計図で、企業の将来のあるべき姿とそこに至るまでの経営資源の配分のシナリオ」と考えています。
経営戦略という場合は、範囲が市場(マーケット)になり、人事戦略という場合は、社内の人事活動になります。
戦略的適正人件費は、人事戦略の一環です。いずれの場合も戦略の策定は、経営トップによるものです。
長期的な基本設計図は、経営者の夢が描かれています。特に今日のような社会情勢の中では、この長いトンネルの先にある夢を、智慧を絞る思いで描いていくことは、経営者の使命です。
智慧を絞る思いとは、これまでのような現状の延長線上には夢がないことを知り、自社の持てる経営資源と自分自身の能力を深掘りして、変革のシナリオをつくるという意味です。
企業のもつ経営資源には、特徴と限界があります。特徴を活かし、限界をよく考えて、戦略が自杜の経営資源に適合しているかどうかも検討する必要があります。経営資源の蓄積が、企業の戦略実行能力を決めてしまいます。
さらに戦略が人びとを燃え立たせることができる内容になっているか、資源の蓄積を促すような内容になっているのかも、考えなければなりません。「人材を人財にする」とは、企業文化を人間尊重に刷新、または変革することを意味します。人間尊重とは甘やかしではなく、その人の持てる能力を十分に発揮させてあげることです。
組織は戦略にしたがいますが、戦略が心や感情への配慮をした内容になっていなければ、人びとを動かすことはできません。一言いかえれば、人々を燃え立たせる内容になっていなければ、どんなによく描けた設計図も絵に描いた餅で終わってしまいます。
この本で私が最も力説したいことが、ここにあります。
すなわち経営資源として、お金のかからない企業文化の刷新を試み、人材を戦略志向にすること、その具体的な手段として、全員参加の評価システムをつくることを提案しているのです。

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